021819米国ハイイールド債:最近の高ボラティリティからの教訓

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マーケット インサイツ

投資家はハイイールド債に関して、短期的な価格動向を予想しようとするよりも、リスク調整後リターンの長期にわたる歴史に注目することでより良い成果が得られると、我々は考えています。

 

要旨

  • 2018年第4四半期は米国ハイイールド債にとって厳しい環境となりましたが、その後の市場心理の急激な好転により、2019年の最初の数週間に市場環境は急速に回復しました。
  • 市場が反転した一方で、スプレッドは過去数年の水準よりも広がった状態が続いています。ここ最近のボラティリティ高の局面にも関わらず、経済情勢と基本的なクレジットファンダメンタルズはこの先もハイイールド債を下支えしていくだろうと我々は見ています。
  • 債券アロケーションについて考える投資家は、市場心理に過剰に反応したり短期的な価格動向の中でタイミングを掴もうとしたりするよりも、リスク調整後リターンを考慮するべきでしょう。歴史的に、ハイイールド債のリスク調整後リターンは他の主要な資産クラスを上回っています。

 

米国株式市場は、厳しい情勢となった2018年第4四半期を経て、2019年1月に大きく反転しました。今週は、米国ハイイールド債市場での同じような状況に目を向けていきたいと思います。

2018年の米国クレジット市場は第3四半期にかけて比較的穏やかに推移しましたが、第4四半期に大きな変化がありました。市場心理が冷え込んだのは10月初め、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言による将来のFRB政策軌道への不透明感がきっかけでした。金利に対する不確実性に加えて、企業利益成長の減速見通し、一部の米国経済統計の弱含み、そして特に中国との間で続く貿易摩擦に直面し、株式市場の不調が始まりました。米国ハイイールド市場は当初は比較的うまく持ちこたえていたものの、リスク資産に対する消極的な市場心理、 バラ色とは言えない経済情勢、そして石油価格の30%下落によって、第4四半期のクレジットスプレッドは最終的に大幅に拡大する結果となったのです。

米国ハイイールド債の対米国債スプレッドは、10月初めに金融危機後の最低水準である316ベーシスポイント(bps)を付けた後、225bps以上拡大し、2019年1月初めには540bpsを超える水準に達しました。こうした不確実性のなか、多くの投資家がハイイールド債へのアロケーションを縮小させました。

それ以降の状況はどうなっているのでしょうか?今年の米国ハイイールド債は過去10年間で最高のスタートを切ることができました。

厳しい第4四半期を招いた多くの要因は消え失せました。FRBからはよりハト派的なトーンが聞こえるようになり、米国経済統計はより力強い内容を示し、米中貿易交渉には一時的ながら進展の兆しが見えるようになっています。2019年1月のICE BofAML 米国ハイイールド債コンストレインドインデックス(ハイイールドインデックス)のリターンは4.6%をつけ、1月としては2009年以降で最高となったほか、2011年以降で最も力強いリターンを示した月となりました。ハイイールドインデックスの2019年2月8日時点の年初来リターンは4.9%と、第4四半期の下落分を帳消しとし、広範な投資適格債ベンチマーク指標(ブルームバーグバークレイズ米国総合債券インデックス)のパフォーマンスを直近の1年、3年、5年、10年の期間で上回る形となりました。

もちろん、米国ハイイールド市場がボラティリティ高の局面による影響を受けないわけではありません。結局のところ、投資適格未満の資産クラスであるハイイールド債は、景気減速に対する投資家不安の影響を受ける可能性があります。景気減速懸念は一般的に、クレジットファンダメンタルズに対する不安やハイイールド債のスプレッド拡大及び価格下落に対する懸念をもたらします。しかし、ハイイールドインデックスのリターンがマイナスになる年は、そう多くありません。実際、2.3%のマイナスリターンとなった2018年以前で、同インデックスのリターンがマイナスとなったのは、過去31年暦中6年に留まっています。マイナスリターンとなった年の翌年はプラスに回帰しており、しかも6回のうち5回は2桁リターンという力強い上昇を示しているのです(図1参照)。
 


図1.米国ハイイールド債は歴史的に見て、下落の翌年に回復している

暦年における年率リターン、1987年-2019年 (2月8日まで)

出典:ICE Data インデックス。2019年のデータは2月8日まで。ハイイールド債はICE BofAML 米国ハイイールド債コンストレインドインデックスによります。

図で示された情報は例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオまたは特定の投資を示すものではありません。金融市場トレンドに関する記述は現在の状況を基にしたものであり、将来変動する可能性があります。市場が将来同様の状況下で同様のパフォーマンスを示す保証はありません。インデックスは非マネージド型であり、手数料や費用の控除は反映されておらず、また直接に投資することはできません。 過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、また将来の成果を保証するものでもありません。
 

長期間にわたって、米国ハイイールド債は米国株式市場との比較において、絶対値ベースとリスク調整後ベースの両方で、非常に良好なリターンを生み出してきました。実際、2019年1月31日までの過去20年間において、ハイイールドインデックスはS&P500種株価指数を上回るリターン(年率平均リターンを基にした場合)を約60%のボラティリティで生み出しています。こうした関係性が全ての環境下で常に保たれるわけではないものの、ハイイールド債は一般的に、株式の2分の1から3分の2のボラティリティで、長期にわたる良好なパフォーマンスと高いリスク調整後リターンを生み出してきた歴史的経緯があります。表1に示される通り、間違いなく最悪と言えるタイミング-つまり、ハイイールド債のスプレッドが史上最低水準を付けた2007年6月(すなわち2008年の世界金融危機が始まる直前)の局面-で投資していた場合でも、その後の米国ハイイールド債は株式の3分の2のボラティリティでほぼ同等のリターンを生み出しており、その結果、シャープレシオは大幅に高くなっています。
 

表1. 米国ハイイールド債の長期パフォーマンス実績と米国株式の比較


出典:モーニングスター。2019年1月31日時点のデータ。

図で示された情報は例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオまたは特定の投資を示すものではありません。金融市場トレンドに関する記述は現在の状況を基にしたものであり、将来変動する可能性があります。市場が将来同様の状況下で同様のパフォーマンスを示す保証はありません。インデックスは非マネージド型であり、手数料や費用の控除は反映されておらず、また直接に投資することはできません。 過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、また将来の成果を保証するものでもありません。
 

現在の情勢は?

ハイイールドインデックスは第4四半期に発生したスプレッド拡大の約半分を回復したものの、2月8日時点のスプレッドは昨年10月初めの低水準よりも100bps 以上広がっている状況が続いています(図2参照)。これは過去2年間のほとんどの水準を大きく上回っている状況です。
 

図2. 米国ハイイールド債スプレッドは依然として高い水準

対米国債スプレッド、2016年12月31日-2019年2月7日

出典: ICE Dataインデックス。OAS=オプション調整後スプレッド。

図で示された情報は例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオまたは特定の投資を示すものではありません。金融市場トレンドに関する記述は現在の状況を基にしたものであり、将来変動する可能性があります。市場が将来同様の状況下で同様のパフォーマンスを示す保証はありません。インデックスは非マネージド型であり、手数料や費用の控除は反映されておらず、また直接に投資することはできません。 過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、また将来の成果を保証するものでもありません。
 

現在のスプレッドは長期平均を下回っているものの、この水準は一定の評価基準によって正当化できると我々は考えています。

§  債務不履行率は依然として低水準。JPモルガンのデータによると、米国ハイイールド債の直近12カ月の債務不履行率は1月に1.77%へと低下し、長期平均を大きく下回りました。米国経済成長は続くという基本シナリオが、ここ数年よりは緩やかなペースで継続するとの予想に立てば、債務不履行率はこの先も平均を下回って推移していくことが広く予想されています。

§  クレジットファンダメンタルズは安定的。  JPモルガンのデータはまた、米国ハイイールド債の発行体の負債比率(負債/ EBITDA (利払い前、税引き前、減価償却前利益))が低下している一方で(図3参照)、インタレスト・カバレッジ・レシオ(EBITDA/利息費用)が過去2年間に改善していることを示しており、どちらの指標も数年来で最も堅調な水準に達しています。これにより、格付け機関は格下げを上回るペースで格上げを行っており、そのペースは2011年以降で最も速くなっています。
 

図3. 米国ハイイールド債発行体による借入れは着実に縮小している

2011年第3四半期-2018年第3四半期(入手可能な最も直近のデータ)のデータ

出典:JPモルガンによるキャピタルIQ. 入手可能な最も直近のデータ。EBITDA=利払い前、税引き前、減価償却前利益。
ハイイールド市場が将来同様の状況下で同様のパフォーマンスを示さない可能性があることに留意することが重要です。図で示された情報は例示を目的としたものに過ぎず、ロードアベットが運用する特定のポートフォリオまたは特定の投資を示すものではありません。 過去のパフォーマンスは信頼に足る指標ではなく、また将来の成果を保証するものでもありません。
 

§  市場構成が改善。過去10年間の米国ハイイールド債は、積極的借り入れよりも借り換え目的の、そしてCCC-格よりもBB-格の発行体による発行が中心になっています。実際、ICEデータインデックスによるデータを基にすると、過去12年間にハイイールドインデックスの約10%がCCC格及びシングルB格の発行からBB格の発行に移っており、この割合は2008年の信用危機以前と比べても最高レベルに近い水準です。

米国ハイイールド債市場の信用力が徐々に改善しているだけでなく、市場規模の縮小によって需給力学が好転しています。以前に我々が指摘したように、投資適格未満企業による発行のほとんどは債券市場からローン市場にシフトしてきています。その結果、2015年初めに1兆4,000億ドルであったハイイールドインデックスの時価総額は、2019年の1月31日時点では1兆1,000億ドルと減少しています。

総括

2018年後半から2019年初めにかけての米国ハイイールド債市場の情勢は、米国株式市場の動向と非常に似通っていました。新年の最初の数週間での回復は、第4四半期の価格変動はファンダメンタルズの実際の変化よりも過剰な反応だったことを示唆しています。

長年にわたって我々が強調してきたように、米国ハイイールド債の歴史的なリスク・リワード特性によると、ハイイールド債の役割は市場のタイミングを掴もうとしてよく見られる軽率な行動のための手段ではなく、債券ポートフォリオの長期アロケーション戦略の中に位置づけられるべきだということが分かります。

2018年12月から2019年1月にかけて見られたような市場の変調は、米国ハイイールド債市場内でのアクティブ運用に好機をもたらす場合が多いことを強調したいと思います。こうした市場の動きはアクティブ運用マネージャーにとって、信用力の高いものから低いものまで、またセクター全体にわたって、現在の環境下での最善のリスク/リワードの好機をもたらす銘柄を選び出す機会を与えてくれるはずです。
 

リスクについての注記:債券の投資価値は金利変動によってまた市場動向に応じて変化します。一般に、金利上昇時には債券価格は下落し、逆に金利低下時には債券価格は上昇します。ジャンク債と時に称される高利回り債ではより高い価格変動リスク、流動性の低さ、適時の元利払い不履行リスクを伴います。債券はまた期限前償還リスク、信用リスク、流動性リスク、金利リスク、そして全般的な市場リスクといった他のリスクも伴う可能性があります。通常では、より期間の長い債券は金利変動に対してより敏感に反応します。つまり償還日までの期間が長いほど、金利変動が債券価格にもたらす影響度は高くなります。低格付け債は高格付け債に比べて高いリスクにさらされる可能性があります。いかなる投資戦略もすべての市場変動を克服することはできず、また将来の投資成果を保証することはできません。さらにはローン保証に利用される特定の担保価値が下落する可能性や流動性が低くなる恐れがあり、ローン価値にマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。株式証券の投資価値は全般的な経済情勢や特定の企業・セクター見通しの変化に応じて変動します。低格付け債券は高格付け社債より高いリスクを伴います。海外投資は一般に国内投資より高いリスクを伴い、それらには価格変動や高い取引コストが含まれます。海外投資には本来、通貨変動や海外事由、政治・経済事由に関連するリスクを含む特有のリスクが存在します。全ての市場変動を乗り越え、将来の成果を保証する投資戦略は存在しません。

金融市場のトレンドに関する記述は現在の市場情勢を基にしたものでありこの先変動する可能性があります。市場が将来同様の状況下で同じようなパフォーマンスを生む保証は一切ありません。

見通しや予想は現在の市場情勢を基にしたものであり予告なく変更されることがあります。予想を保証ととらえるべきではありません。

本リサーチには、将来の事由についての特定の前提を基にした「将来の見通しに関する記述」という特定の前提が含まれています。実際の事由を予測することは難しく、前提とした内容と異なる可能性があります。将来の見通しに関する記述が実現するか、または実際のリターンや結果が本リサーチで記述した内容と大きく異ならないかについて、保証することはできません。

1ベーシスポイントは1パーセントの100分の1です。

シャープレシオはリスク調整後パフォーマンスの指標です。シャープレシオは10年物米国債のようなリスクフリーレートをポートフォリオのリターンから差し引き、その値をポートフォリオリターンの標準偏差で割ったものです。ポートフォリオのシャープレシオが大きいほど、リスク調整後パフォーマンスは良いとされます。

標準偏差はボラティリティの指標であり、投資リターンのばらつきを示すものです。

出典: ICE Data Indices, LLC (ICE)の許可のもと使用しています。ICEは ICE BofAML インデックス及び関連するデータについて「現状有姿の」データとして利用することを許可しており、その内容については保証しません。またICE BofAMLインデックス及びそれに含まれるデータ、関連するデータ、またはそこから由来するデータについての適切性、品質、正確性、適時性、完全性については保証しません。またICE BofAMLインデックス及びそれに含まれるデータ、関連するデータ、またはそこから由来するデータの利用に関していかなる法的責任も負いません。またロードアベットあるいはその商品またはサービスへの出資、支持、推奨は行っておりません。

ポートフォリオにおける証券の信用力は、スタンダード&プアーズ、ムーディーズ、フィッチといった全米で認知されている統計的格付け機関(NESRO)によって、発行体の信用力を示すものとして付与されています。格付けは「AAA格」(最高格付け)から「D」(最低格付け)までにわたります。「BBB」格以上の債券は投資適格と見なされます。「BB格」以下の格付けは低格付け債(ジャンク債)です。利回りの高い非投資適格債(ジャンク債)は、投資適格債よりも高いリスクを伴います。厳しい市場環境は、こうした証券における発行体の元利金支払い能力に影響を及ぼす可能性があります。

指数は非運用型であり手数料や費用控除を反映しておらず、また直接投資することはできません。

前述の経済レポートで示された見解は発表日現在のものであり、今後その内容が変更となる可能性があります。また弊社の見解を表明するものではありません。本資料は特定の投資または一般的な市場に関する予測、リサーチ、投資アドバイスとしての利用を目的として作成されておらず、また法的・税務上の助言を提供するものでもありません。本資料は当社が信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性および完全性について保証するものではありません。

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